韓国視察に行ってきました

 

先日、一般社団法人コレクティブ・フォー・チルドレンが実施する韓国研修に参加しました。

この研修は韓国において経済的に困窮している世帯を対象とした
支援がどのように行われているかについてを学ぶことを目的とした研修です。

■相対的貧困率および子どもの貧困率について
まず前提として韓国における子どもの貧困率について説明します。
韓国の保健社会研究院が出した「児童貧困の推移と含意」という報告書によると、韓国における相対的貧困率および子どもの貧困率は下記のような数値となっています。

〇韓国
相対的な貧困率:2006年13.4%、2015年12.8%
子どもの貧困率:2006年10.1%、2015年 6.9%

〇日本
相対的な貧困率:2006年15.7%、2015年15.6%
子どもの貧困率:2006年14.2%、2015年13.9%

〇OECD平均
相対的な貧困率:2010年11.3%
子どもの貧困率:2010年13.3%

上記の数値を見ると日本ではここ10年間相対的貧困率は横ばい状態であるが、韓国において大幅に子どもの貧困率が低下しています。

■子どもを取り巻く環境
まず驚いたことは、韓国における子どもを取り巻く学習環境の状態でした。
ニュースでは知っていましたが、韓国では大学受験がともて重要視されています。
そのため、高校生になると午前7時から学校へ行き、深夜0時近くまで学習塾に通っているとのことです。
このことから学校外教育への投資も非常に大きく、経済的な問題が子どもの将来に大きく関係していることがわかります。

■地域連携について
最初に訪問させていただいた施設で驚いたことは、行政・地域団体・民間企業が密な連携を取っていることでした。
例えば韓国において虐待事案の通報があった場合、それはすべて福祉部局に連携され、警察と福祉部局の担当者が一緒に対象家庭を訪問するということです。
また、フォローについては福祉部局だけでは対応しきれない場合は、民間団体にも協力を仰ぎ、官民一体となり対応しているとのことでした。
日本においては別組織との連携や個人情報の壁があり、組織の壁を越えた連携は非常に困難であるように思います。
韓国におけるこの対応は非常に柔軟性があり、スピード感が高い取り組みであるように感じました。
いくつかの前提条件が違うということは念頭におきつつも、この仕組みを作ったプロセスについては日本も学ぶべきことが多いように感じました。
また、説明してくれたスタッフさんを含めて非常に若い方がこのような役割を担っていることに驚きました。
※ちなみに韓国では、ネット選挙運動導入により若者の投票率が大幅に向上しているらし
い。このあたりの取り組みもまわりまわって若者の社会課題等への関心の高さにつなが
っているのかもしれない。

■ドリームスタート(貧困児童プログラム)の存在
韓国では乳幼児から対応できる包括的な貧困児童プログラムがあります。
これはアメリカのヘッドスタートやイギリスにおけるシュアスタートを参考とした取り組みと言えます。
韓国ではもともと民間団体でWEスタートという取り組みを行っていました。
WEスタートでは、福祉、教育、健康・保健の領域において、行政・民間・学校等の様々な機関が情報を交換し、経済的に困窮した家庭の支援を行っていました。
それが制度化しドリームスタートと名前を変え、現在は韓国の各市区郡に拠点が設置され、子どもたちの支援がおこなわれている。
また、当該制度を導入するにあたり、児童福祉法を改定し貧困児童に対する法的根拠の整備についてもきちんと行われていることが印象的でした。

〇ヘッドスタート(アメリカ)
1960年代半ばから行われいてる取り組み
低所得層の3歳から4歳の子どもを対象とし、就学前にアルファベットが読め、10までの数が数えられるようになることを目標に実施している制度
これはただ単に教育面だけではなく、家族を巻き込み健康・栄養指導等も含めた制度です。

〇シュアスタート(イギリス)
1997年の政権交代において提案された青少年に対する横断的に支援制度
低所得層の4歳以下の子どもたちを対象としている。
現在はチルドレンズセンターという施設を2500か所以上設置しており下記サービスの提供を行っている。
・終日保育
・センター内での学びがうまく進むように導く質の高い教師によるインプット
・親への働き掛け
・家族への支援
・家庭保育員(childminder)のネットワーク基地
・妊婦保健を含む、子どもや家族への保健サービス
・特別なニーズを持つ子どもや親に対する支援
・ジョブセンター・プラス(公共職業安定機関)、地域の職業訓練機関、高等教育機関等との有効な連携

日本におけるヘッドスタートやシュアスタートと同様に取り組みについては日本に帰国したのち調べてみたが同様の取り組みはなさそうであった。
いくつかの研究では未就学時点での介入がより効果があるという研究結果もあり、日本においてもヘッドスタートの取り組みは必要不可欠であるように感じています。

日本においては、それぞれの分野でご活躍されているNPOがありますが、連携されているとは言えず、
それぞれがそれぞれの支援をしているという印象です。

いきなり法律の改正とまではいかなくとも、韓国におけるWEスタートのように民間からヘッドスタートのような取り組みを行っていく必要があると強く感じました。
自分たちだけではできないことは得意団体と連携して

文字にすると非常に簡単に思えますが、これが日本においては大きな障壁であるように感じます。
ただ、ここにまだまだ可能性や伸びしろを感じるのも事実です。

今回の視察メンバーで関西に地区におけるヘッドスタートの原型が作れたらおもしろいなと考えてみたりしています。

松本