TSU・NA・GI

●“relation”〜本会スタッフのリレーエッセイ〜 6

 ゴールデンウィークにクラシックのコンサートを聴きに行った。クラシックを聴きに行くのは3回目のことだ。曲目は、「G線上のアリア」「モルダウ」「新世界より」といったポピュラーなものばかりであった。何度も耳にしたことのある曲ではあったが、やはり生で聴くと迫力が違う。オーケストラの重厚感、バイオリンの音色、力強くタクトを振る指揮者、・・・。感動して鳥肌が立った。一緒に行った友人と「やっぱりたまにはクラシックも聴くもんやなー」などと、いかにも素人くさい会話を交わしながら帰路についた。
 クラシックに興味を持つようになったのは大学1年の頃だ。高校まではポップスやロックを聴いていたのだが、ふと新しいジャンルに触れたくなったのだ。学校の帰りにCD屋さんによってみた。何を買うかあてはなかったが、いつもと違うコーナーに行ってみた。クラシックのコーナーだ。一枚のCDを手にした。ベートベン交響曲第九「合唱」。特に思い入れがあるわけではない。一番に目に付いただけだ。そのままレジに行った。いわゆる衝動買いだった。それまで第九を耳にしたことは何度もあったが、自分から進んで「聴いた」のはそれが初めてと言ってよいだろう。まさに目が覚めた思いだった。「音楽はすばらしい」というありふれた言葉が身にしみて分かった。
 それからというもの様々なジャンルの音楽を聴くようになった。クラシックの他に、レゲエやジャズ、三味線に雅楽、讃美歌なども聴くようになった。ポップスやロックも見捨ててはいない。モーニング娘の「LOVEマシーン」などもなかなかいいものだ。あのとき手に取ったCD一枚によって、音楽に対する視野が広がった。様々なジャンルを抵抗なく、聴くことができるようになった。音楽を聴く「楽しみ」を覚えた。
 音楽に関してだけでなく、全てに同じ事がいえるのだろう。自分が今いる場所を少し離れてみる。それまでは見えなかったことが見えてくる。新しいものに触れ、世界が広がる。新しい人に出逢い、新しい自分に出逢う。そういったことを繰り返して人は成長していくように思う。背伸びをせずに、自分のペースで。肩肘張らずに、一息ついて。たまには気の合う友人と酒を飲むもよし、何もせずにぼんやりするもよし。思い立ったときに動いてみる。少し違った景色が見えるかもしれない。少し違った自分が見えるかもしれない。そういうことを繰り返して人は成長していくのだろう。 最後にリレーのたすきを渡します。次は瀧本康平くんにお願いします。

特定非営利活動法人ブレーンヒューマニティー
ボランティア
森 正 義

TSU・NA・GI第2巻第2号(2000/5/20発行)より