TSU・NA・GI

●「のじまのつぶやき」 7 〜絵を描く〜

 最近、あるスタッフに勧められてあるマンガを読んだ。『サンクチュアリ』というそのマンガは、この国を変革することを夢見た若者二人の物語として作られている。一人は政治家を目指し、一人は極道の世界へ入る。二人は共通の目的を持ち、同じ夢を見ていた。そのマンガに度々登場するのが、「絵を描く」という言葉だった。二人は、同じ絵を描き、それぞれの世界でその絵を広めていく。自分たちの思いを伝えるためには、どうしても具体的な絵が必要となる。
 いま、私は大阪府の青年政策会議というところで副議長を任され、府の中長期青少年育成計画の策定を進めている。昨年の9月から始まった会議だが、抽象的だった絵も徐々に具体的になりつつある。「健全とは何か?」とか「育成とは?」といった議論が「ウェルネス」「居場所」というキーワードを経て、一つの施策になろうとしている。
 組織の運営やマネージメントの世界でビジョンという言葉が語られて久しい。私たちも会員、ボランティア、支援者、クライアント、社会、それぞれに絵を示すことが求められている。
 絵を描くこと。この言葉を聞くと、ブレーンヒューマニティーの会歌を思い出す。「空色になったキャンパス」と題されたその歌の一節にこんな歌詞がある。「子どもの頃に描いた絵の景色に着くだろうか」 いま、私たちは、これからの絵を描こうとしている。しかし、前ばかりを見ていては、見落としてしまうこともある。そのときに、自分が子どもだった頃を振り返りながら、明日を見つめたいと思う。

特定非営利活動法人ブレーンヒューマニティー代表
能 島  裕 介

TSU・NA・GI第2巻第3号(2000/6/20発行)より