TSU・NA・GI

●"Do Communications!" 15
〜 「助けてぇ〜」と言う勇気 〜


 シンボリックなゲームを紹介しましょう。私の友人で、ネイティブ・アメリカンの儀式を取り入れた独創的な教育活動を展開しているMさんが研修で用いているゲームです。
 正確な名称は忘れましたが、全員が鬼になる鬼ごっこ。ルールは、参加しているメンバー全員が鬼です。鬼に背中をたたかれたら、負けです。全員がワーッと動きますので、すぐに終了します。2、3回やった後、新しいルールが付け加えられます。
 鬼に背中をたたかれて、死んだら、今度は「助けてくれー」といって、右手を上げる。近くの人がその手をたたくと、生き返って、再びゲームに戻れるのです。
 このルールが加わるとゲームはエンドレスになります。研修の開始時には、緊張していた参加者もいっきに、身体も心も解放されていきます。
 このゲームを進行しているMさんは、「助けてくれー」と大きな声で叫ぶことを勧めます。ゲームを終えたところで、参加者に「助けてくれー」と言った感想を求めたり、助けた時の気持ちを聞いたりしながら、「助けのほしい時に助けてーとしっかり頼んでみる、新しいつながりへの入り口になりませんか。」などと話し、プログラムを次へと展開していきます。
 「これは敗者復活のゲームではないか。」彼のプログラムを観察した私の感想です。
 最近、不登校の子どもを持つ母親や父親の相談を受けていると、一度失敗したら、敗者となり、人生のすべてが終わってしまうと、親も子も思い込んでいるところがあります。失敗したのは自分だけ。落ち込んでいる自分を助けてほしい。けれども周りは誰も気づいてくれない。しかし、自分から「助けてぇ〜」と伝わるように声を出していないのです。
 このゲームの面白さは、敗者は自分ひとりではなく、みんなが敗者。そして誰もが助ける人になるところです。このゲームのようにもし、失敗した時に「助けてぇ〜」と大声で叫んで、助けてもらえたらどんなにうれしいことでしょう。もう一度、挑戦できるのです。失敗を活かして新しい人生の道を選べるのです。加えて、助け・助けられる関係がどれだけ自分を豊かにするのかを実感として学ぶことになるのです。

(聖マーガレット生涯教育研究所 主任研究員 長尾文雄)

TSU・NA・GI第2巻第11号(2001/3/20発行)より