活動記録
中学校への「福祉体験学習」へ当会ボランティアを派遣!

 福祉という言葉が、氾濫している。
 高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉・・・。行政の肥大化が懸念されつつも、様々な分野で国を挙げての福祉対策が望まれ、また国民も福祉国家によるサービスを当然の権利のごとく期待している。この現象に私は些かの違和感を抱いている。
 それをもって先月ブレーンヒューマニティーに、NPOの中間支援組織であるCS神戸より、S中学における「福祉体験学習」へのボランティアの協力依頼があった。
 正直、とまどった。ミーティングを重ねても、何をするためにどのような心づもりでこの協力事業を行うべきなのか、私自身がわからない。そのような状態のまま11月10日の当日を迎え、「総合的な学習」の研究指定校に指名されているS中学における「福祉体験学習」へ、障害者介助およびボランティア講座の講師として、当会から4名が参加した。中学2年生250名が7つのグループに分かれ、視覚、聴覚、身体、知的等の障害を持つ講師、またボランティアをする側の話を聞き、質問や会話をもって福祉体験の契機にしようというのだ。
 私は脳性麻痺のため重度の身体障害と言語障害を持つYさんのグループに、介助ボランティアとして参加した。他のグループにはまったく関与していないため、以下の記録は私個人の体験とその主観的記録にすぎないことをことわっておく。
 Yさんは写真学校を卒業し、喫茶店勤務を経てコーヒー豆の販売を仕事に自活している。趣味として写真も続け、また他の障害者が商売をして自活するためにボランティアとして支援活動をしている。聞き取り辛いときは筆談を用いて、講話と質疑応答は50分間ほど続いた。圧倒的なパワーとユーモアに満ちた彼の半生のなかで、特に記憶に残るのは、彼の定めた「障害を生きる5箇条」である。
 Yさんはここに、障害者は要領よく手抜きをすること、を挙げている。そして健常者と仲良くすること、とも言う。障害を持つ自分は、人の手助けなしには生きていくのが困難である、という冷静な視線。しかしそれは自分だけではない。人は人を必要とする、そんな時に隣人が手を貸してくれる、それが可能であればこそ幸せに生きることが出来る。
 福祉とは幸福の基礎を創ることだと、言った人がいた。
 隣人が幸せに生きるために、そして自分が幸せに生きるために手を貸し合うこと、それがあらゆるところで可能となる環境を創ること。これが福祉という言葉の実践なのだと、今、私は考えている。

(ブレーンヒューマニティー事務次長 近藤 絵美子)